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3.猫ノイローゼ?

 なんとなく猫のことが気になっているので、今まで読んだこともなかった猫雑誌を立ち読みなぞしてしまう。以前から、結婚したら猫を飼うことを漠然と夢みていたこともあり、猫との楽しそうな暮らしが頭に浮かんでしかたなかった。

 前にバイトした会社でお世話になったMさんは、犬を飼うためにペット可のマンションに引っ越していた。彼女にペット可マンションのことをメールで聞いてみたら、ペット可賃貸物件を扱うサイトを教えてもらった。

 とはいえ、現実には引っ越すなんて無理だよなあ、とも思っていた。このマンションに住み始めてまだ1年しか経っていなかったからだ。それに、JKは引っ越すことに賛成するはずがない。こんなことなら最初からペット可の家を借りるんだったなあ、と思って「もし今度引っ越すときは、絶対ペット可のところにするんだ」と言ってみた。すると、「別に今から探してもいいよ」と言うではないか。それを聞いて、引っ越しを真剣に考えるようになった。


 7月半ばのある夜、Mさんに教えてもらったペット可賃貸物件専門の不動産屋のサイトから問い合わせを出してみた。でも出してしまってから冷静に考えて後悔した。今の家は借りてからまだ1年。しかも、私が住むようになってまだ半年ちょっと。いろいろ難点もあるけど、駅から徒歩6分で便利だしその割に家賃は高くはない。いったい今の環境のどこが不満なのだ?猫を保護するために引っ越しまでするのか?

 でも猫はこれからもずっとベランダ下に住み続けるだろう。エサももらいに来るだろう。今さら追い払えるのか?かわいいから、にゃーにゃー鳴かれたらエサをあげたくなる。エサをもらえなくて死んだり病気になったらどうしよう。そんなに心配なら、やっぱり里親を探したほうが良いのだろうか・・・。

 いろいろ考えてわけがわからなくなってきた。だんだん家事ができなくなってしまい、食事は適当なものになっていた。猫の声が聞こえるような気がするという話をすると、JKは「そりゃノイローゼだよ」と言った。

「猫箱」になってベランダでくつろぐ。私はこのときまで、猫がこんなふうにひじを折り畳んだ格好で寝るとは知らなかった。

 翌日、JKと猫のことを話し合った。うちで飼えない以上、これ以上エサを与えるのはかえって残酷なことだから、猫がきても無視して、自然と来なくなるようにするしかない、という話をした。人間て、なんて勝手なんだろう。涙が出た。

 JKは、「あんなニボシしかあげてないのに動けるはずがない。きっと他の家でたらふく食ってるよ」と言った。他でエサがもらえるなら、飢え死にしたりはしないかなあ、と無理やり納得することにした。

 その日の午後、有楽町で235と会った。サッカーのワールドカップは終わったばかりだったが、期間限定のナカタドットネットカフェがまだやっていたので、そこへ行った。

 猫のことを話したら、235は「猫を飼いたい人は結構いるんじゃないの?知り合いとかいろいろ聞いてみたら?」と言った。それを聞いて、なんとなく里親探しができるような気がしてきた。235も友達に聞いてみてくれるという。家に帰ったら、猫の写真をWEBに上げてみよう、と思った。

 ところが、家に帰ると、昨日問い合わせをしたC不動産から早くも返事がきていた。社長自らのメールで、「そんなやさしい気持ちでお住まいを探していただけるとは嬉しいです」とえらく感激していた。それを読んだら、なんか申し訳ないやら情けないやらでまたまた落ち込んでしまった。私なんて猫を飼いたいと思ってみたり、追い払おうとしてみたり、里親を探そうとしたり、勝手なことばかり考えているというのに。穴があったら入りたかった。

 次の日はすっかり憂鬱になって何も手に付かなくなってしまった。それでも、C不動産には物件探しを中止する旨とお詫びのメールを出しておいた。私が寝込んでいるあいだにJKはもう猫にエサをあげない方針をとり、「シッ、シッ」と言って追い払っていた。

 しかしその夜、235からきたメールを見て、ようやく里親探しをしてみようという気になった。235の「友達に聞いてみた、もっと他の友達にも聞てみる」という言葉に励まされた。

 さっそく猫の写真をWEBにアップし、知り合いという知り合いにメールを出したのだった。

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