夕凪の街 桜の国
以前、新聞か何かで紹介されたのを見てからずっと気になっていた「夕凪の街 桜の国」。つい最近、ようやく読む機会ができた。これは確かに評判通りの良作だと思う。
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いわゆる「ヒロシマ」をテーマにした内容で、ある被爆者一家の10年後、42年後、59年後の様子を描いている。とはいえ絵柄も描写も穏やかで、例えば「はだしのゲン」のような直接的で生々しい描写は一切ないし、被爆当時の様子も2、3ページしか出てこない。にも関わらず、何かじわじわと迫ってくるものがある。
原爆について何の予備知識もない場合には「はだしのゲン」的な作品のほうが分かりやすいかもしれないけど、ある程度知っている人にとってはこの作品のほうがむしろ「考えさせられる」のではないかと思う。
以下、ネタばれになるのでご注意。
私が一番ハッとしたのは、「桜の国」の主人公が私と同世代だということ。今までどれだけドラマや映画や本で見ていても、原爆や戦争なんて遠い昔のことだと思っていた。けれど、自分と同世代の人たちが「被爆二世」にあたるのだと今さらながら気がついて軽く衝撃を受けた。さらに、主人公の弟のように結婚差別を受けることも未だにある、あり得るのだということにも驚いた。一体何十年経っているというのだ?周りに広島や長崎出身者がいないので、そんなこと全く思いもよらなかった。
あと、漫画の描写の中でこれはすごいなと思ったのは、「夕凪の街」の主人公皆実がだんだん弱って死んでいくときの様子。目が見えなくなってから、まっ白いコマの中に皆実の意識を表した台詞と見舞いに来てくれた人の台詞だけが淡々と書かれているのが妙にリアルだった。読み手の想像力に任せるような描き方をしている分、直接的でグロい絵を見せられるよりはるかに考えさせられる。
折りしも今年映画化されるらしい。映像化しても原作の持ち味を超えられないような気がなんとなくしてしまうけど、映画になれば多くの人に知られる機会が増えるだろう。そしたら国内だけでなく海外でも(むしろ海外でこそ)、観てもらえるといいんじゃないかと思う。
